SMOで初めてJMO会員に登録
CRS研究所(札幌市、代表取締役植草友幸氏)は、「札幌産科婦人科治験ネットワーク」の包括支援業務を順調に展開し、新たに2施設の参加を得て産婦人科領域の基盤を固めた。CRC派遣業務を行っていた整形外科領域でも、1施設でSMO業務をスタートさせることが決まっている。こうした中、SMOとして初めて、日本公定書協会が提供するMedDRA/J(ICH国際医薬用語集日本語版)の利用会員(JMO会員)となるなど、今度は質の向上を目指した取り組みに力を注いでいく考えである。
包括支援業務は安定した展開へ
★産婦人科、整形外科領域の環境整う
得意領域とする産婦人科領域では、新たに産婦人科古尾医院(札幌市)、プリモウイメンズクリニック(江別市)の2施設が「札幌産科婦人科治験ネットワーク」に産科し、全体として6施設で治験を進めていくことになった。現在も子宮内膜症、性感染症などの第Ⅱ相試験が実験中、あるいは今後予定されている。
また1施設だった緊急時の受け入れ施設に天使病院(札幌市)が加わり、有害事象時の対応も手厚い体制を整えた。これ以上ネットワークの参加施設を増やす予定はなく、産婦人科領域の基盤は、ほぼ固まったものと捉えられている。
もう一つの重点領域として、CRC派遣業務を行ってきた整形外科領域は、今夏から1施設(安井整形外科病院)でSMO業務をスタートさせることが決まった。CRS研究所が請け負った第Ⅱ相試験100例のうち、20例を包括支援業務、80例をCRCの派遣で対応していく。
現在10人のスタッフが全力を挙げて準備に当たっている段階で、植草氏は「この試験でしっかりと結果を出すことで、第Ⅲ相試験でもリピートを狙っていきたい」と意欲を示している。
★QC部門を立ち上げ
このように、SMO業務をめぐっては、産婦人科、整形外科領域の環境が整ってきたことから、今後は品質向上への取り組みを優先的に進めていく考えにある。
その一環として、新たにQC部門を立ち上げ、CRC部門、QC部門、SMA(治験事務局)部門の3部門体制を敷いた。QC部門はCRCが兼任し、原資料を電子化して一元管理するシステムの「セントラルモニタリング」でCRFのチェックを行うというもの。
特にCRFの二重チェックは、大きな効果を上げてきている。最近では、ロジカルミスがほとんど見られず、製薬企業からのクエリー提出もゼロになったという。既にシステムの運用は80例まで実績が積み重なってきたようだ。
★グローバル試験に対応
最近になって、日本公定協会が提出するMedDRA/Jの利用会員になった。CRFの世界標準化をにらんだ対応であり、SMOとしては初めてのケースだ。当面はCRFの用語を統一し、コード化することで、病名に関するCRCの意識づけを図っていく。
植草氏は、「SMOがライセンスを持ち、どんな試験でも統一した用語でCRFが書けるようになることは、グローバル試験への対応には欠かせない」と強調する。
CRS研究所では、得意分野の産婦人科、整形外科領域でグローバル試験の依頼があれば、積極的に参加していく方針である。
一方、今年からハイクリップス(東京都中央区)と業務提携し、CRCの勉強会をきっかけに交流をスタートさせた。
勉強会は教育研修の一環として行われている。今後提携の方向性は未定だが、これによるCRS研究所が培ってきたスタンスに変化はない。あくまでも、ゆるやかな提携関係の構築と捉えている。