「北の大地でコーディネーター草の根展開」

~得意領域に特化した事業めざし~
CRS研究所(札幌市、代表取締役植草友幸氏)は今月一日、前身である合資会社北海道CRS研究所の事業を継承し、新たなスタートを切った。合資会社は3年前の平成11年に設立したもので、治験コーディネーター(CRC)業務、包括的治験支援(SMO)業務を二本柱としてきた。代表取締役の植草氏は、製薬会社勤務時代の実績を生かし、特に産婦人科領域と整形外科領域を専門に扱う業務を展開している。日本にCRCという概念がない時代から、北海道の地で着実に治験コーディネーターの根を広げてきたCRS研究所。「ビジネスとしては甘いと言われるかもしれない」と話す植草氏だが、株式会社に事業継承しても初心は変わっていない。
~イギリスのコーディネーター業務に衝撃~
CRS研究所の取り扱い業務は、CRC業務、SMO業務の二本柱だが、製薬会社向けの助言という治験コンサルタント業務も適宜行っていく。スタッフはCRC6人、事務職員1人で、CRCは全員看護師の資格を持つ。治験事務局業務はすべて植草氏が請け負い、7人の外部委員(薬剤師2人、医師3人、司法書士、税理士各1人)からなるIRBも設置されている。現在、CRC業務としては、手稲渓仁会病院、札幌北楡病院、北海道整形外科記念病院、哲仁会えにわ病院の4施設から外部委託を受けている。CRC業務は整形外科領域が主体で、術後血栓症予防薬の治験に多くかかわっている。また、SMO業務は、既に産科婦人科はしもとクリニックで3プロトコール、札幌マタニティ・ウイメンズホスピタルで1プロトコールを実施済みである。今月以降、新たに更年期障害治療薬の2プロトコールを受託予定で、さらに性感染症、子宮内膜症の治験も計画されている。産婦人科領域と整形外科領域の得意分野を強化しながら、今後もこの領域に特化した事業を展開する予定だ。
もともと植草氏は、外資系製薬会社のローヌ・プーラン ローラーで開発を担当。更年期障害治療薬のフェーズⅠから全行程にかかわった経験を持つ。モニターとして北海道に赴任し、さまざまな医療機関の開拓に携わってきた。そうした実績が領域特化の強みにつながっている。北海道CRS研究所立ち上げのきっかけも、ローヌ・プーラン ローラー時代に経験した欧州研修だった。「イギリスの2病院を見学したときコーディネーターの活動を目の当たりにして衝撃を受けた」と植草氏は振り返る。帰国後、会社負担でコーディネーター業務の予算化を実現。まだCRCの概念がなかった時代に、北海道の1病院でコーディネーター業務を導入した。この試験的導入がビジネスへの手がかりを掴むきっかけとなった。ちょうど、新GCP施行された頃である。
初めてSMO業務を受託したのは1999年10月。製薬会社時代に紹介された産科婦人科はしもとクリニックだった。同11月には手稲渓仁会病院からCRC業務を受託し、本格的な事業がスタートした。当初は植草氏とパートの2人体制だったこともあり、ノウハウを助言するコンサルタント業務が多かった。現在、CRC業務は治験ごとに請け負っているが、SMO業務はすべての業務を包括的に請け負う一社独占契約を結んでいる。複数のSMOが医療機関の窓口になれば、依頼者が混乱することが予想された。その結果として、信頼も治験の質も下がってしまうことだけは避けたかったからだという。
SMO業務の受託に当たっては、必ず事業として病院経営が成り立っていることを前提にしている。そのため、ボランティアパネルを作る考えはない。「医療機関が足りないと感じている部分を補い、伸ばしていく一つの手段が治験だとすれば、SMOとして必要とされる部分を一緒に手伝っていきたい」と植草氏は話している。
~SMOとして必要とされる業務を~
CRS研究所は今後、産婦人科領域と整形外科領域の強化を目指し、教育研修にも力を注いでいく考えである。近日中にも、社員に加え、関連提携病院の希望者、治験協力者等も交えた教育研修会が開催されることになっている。研修会は年間で産婦人科領域4~5コマ、整形外科領域3~4コマ、一般論2コマほどの内容が見込まれ、外部講師を招いて毎月定例開催が計画されている。こうした教育研修を重ねることで、CRC業務の質の向上を目指していく。
植草氏は、「われわれは薬の開発をしているのであって、ビジネスを広げるためにだけやっているのではない。あくまでスムーズに低コストで治験を進め、より早く優れた新薬を認可させることが目的。」と強調する。その気になればビジネスを拡大させることは可能だが、治験を進める中で、必要とされる部分での業務にやりがいを感じているという。